企業は様々な活動を行い顧客へ価値を提供することで利益をあげることができます。
提供している価値はどのようにして作り出されているのでしょうか?
提供している価値を詳細に分析するフレームワークとしてバリューチェーン分析があります。
バリューチェーン分析は大きく主活動と支援活動の2つに分類されさらに9つの要素、活動に分解されます。
バリューチェーン分析を知ることで企業の活動のどこにコストがかかっているのか? どこで価値を大きく生み出せているかがわかるようになります。
バリューチェーン分析とは?
バリューチェーン分析と1つの企業が価値を提供するための事業活動を機能ごとに分解し、個々の企業活動を整合化していく分析フレームワークです。
バリューチェーン分析は大きく2つの活動に分類されています。
- 主活動
- 支援活動
バリューチェーン分析の主活動
主活動は製品、サービスを顧客に提供することに直接関与する活動のことです。
主活動は以下の5つの要素に分解されます。
- 購買物流
- 製造
- 出荷物流
- 販売・マーケティング
- サービス
上記の並び順に活動が行われていきます。
各活動ごとに価値が付加されていき最終的に各活動で付加した価値の総和が顧客の元に届きます。
バリューチェーン分析の支援活動
支援活動は製品やサービスの提供には直接的に関与しないが主活動をスムーズに進めるための活動です。
支援活動は4つの要素に分類されます。
- インフラ
- 人事・労務管理
- 技術開発
- 調達活動
名前の通り主活動が価値を作っているのを支援しているのが支援活動になります。
バリューチェーン分析の目的
何か製品を作ったり、サービスを提供したりと企業は価値を提供しています。
1つの製品、サービスの価値は1つの企業が生み出されていますが詳細にみてみると価値を提供するために様々な要素で構成されていることがわかります。
バリューチェーン分析は価値を提供するための事業活動を機能ごとに分解しどの機能で付加価値が生み出されているのかどの機能にコストがかかっているのかを分析することができます。
成功要因はどこにあるのか?
バリューチェーン分析をする際に重要なのは分類の厳密さではなく企業の活動のどこにコストがかかっていて、事業戦略の貢献度が大きいところを明確にすることです。
業界のバリューチェーン分析を行うことで業界や市場ごとにどこが成功のポイントなのかを理解できたりします。
コストをどこで抑えるか?もしくはどこに注力するか?
バリューチェーン分析は企業が価格競争や差別化をしようとするときに手段を検討することにも利用できます。
価格競争をする際には顧客にとっての必要な機能は保ちながらどの機能でコストを削減するのかを検討することができます。
差別化する場合には差別化するポイントがどこなのか、どの機能で高付加価値を生み出すことができるのかを検討することができます。
バリューチェーン分析とSWOT分析
企業が置かれている環境を分析するフレームワークにSWOT分析がありますが内部環境分析を行うのに組み合わせることができます。
SWOT分析では内部環境は『強み』と『弱み』の2つの要素を持っています。
しかし自社の強みと弱みを抽出すると言っても大きい場合にはどこから手をつけていいのかわからなくなってしまいます。
そんな時にバリューチェーン分析を合わせて使うことができます。
バリューチェーン分析は企業活動を分解しているので各機能についての『強み』と『弱み』を検証していくことができます。
バリューチェーン分析をした内容からSWOT分析の内部環境分析をスムーズに行うことができます。
バリューチェーン分析 - 中小企業診断士試験の過去問チェック
企業経営理論の平成30年度 第6問と平成28年度 第8問をみてみましょう。
企業経営理論 - 平成30年度 第6問
価値連鎖(バリューチェーン)のどれだけの活動を自社の中で行うかが、その企業の垂直統合度を決めると言われている。自社の中で行う活動の数が多いほど、垂直統合度が高く、その数が少ないほど垂直統合度が低いとした場合、ある部品メーカーA社が垂直統合度を高める理由として、最も適切なものはどれか。
ア A社の部品を使って完成品を製造している企業は多数存在しているが、いずれの企業もA社の部品を仕入れることができないと、それぞれの完成品を製造できない。
イ A社の部品を作るために必要な原材料については、優良な販売先が多数存在しており、それらの企業から品質の良い原材料を低コストで仕入れることが容易である。
ウ A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーは、その原材料をA社以外に販売することはできない。
エ A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーが少数であり、環境変化により、A社はこれらの原材料の入手が困難となる。
オ A社は、A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーとの間で、将来起こりうるすべての事態を想定し、かつそれらの事態に対してA社が不利にならないようなすべての条件を網羅した契約を交わすことができる。
正解:エ
垂直統合は製造業のあるメーカーが川下の販売業者と統合したり、川上の原料メーカーと統合するケースです。
統合することで川上から川下までの機能を企業に取り込み、内製化することによって多くのメリットを受けることができます。
アの内容
A社の部品を使う企業が多数存在しているのであれば垂直統合をする必要はありません。
A社の部品がなければ完成品ができないと言った有利な状態にもあります。(ファイブフォース分析の売り手が強い状態)
さらに垂直統合をすることで多数いる顧客と競合関係にもなります。
よってアの内容は誤りです。
イの内容
原材料を仕入れるための仕入先が多数あり、質も良く安定しているのであれば垂直統合をする必要はありません。
よってイの内容は誤りです。
ウの内容
販売している部品を作るために必要な原材料を独占して仕入れることができるのでA社が垂直統合をする必要は少ないと考えられます。
よってウの内容は誤りです。
一方で原材料メーカーからすると販売先が1つしかなくファイブフォースの買い手に強い交渉力をもたれてしまっています。
新しい販路を開拓する、垂直統合をするなどは検討の余地がありそうです。
エの内容
原材料の仕入先が少数であり、環境の変化によって入手が困難になるのであれば経営の安定性が低いと思われます。
垂直統合をすることで仕入れを内製化し確実な製品の製造が行えるようになることは経営の安定性の向上に寄与します。
よってエの内容は正しいです。
オの内容
原材料メーカーとかなり有利な契約が結べるというのはウの内容と近いです。
また契約内容をあらゆる事態が想定されていると書かれているのでウ以上に有利な立場であると考えられます。
原材料メーカーに強い交渉力を持った状態での垂直統合をする必要は低いと考えられます。
よってオの内容は誤りです。
企業経営理論 - 平成28年度 第8問
競争優位の源泉を分析するには、バリュー・チェーン(価値連鎖)という概念が有効である。
バリュー・チェーンに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 差別化の効果は、買い手が認める価値と、自社のバリュー・チェーンのなかで作り出した特異性を生み出すためのコストが同水準になった時に最大化する。
イ バリュー・チェーン内で付加価値を生み出していない価値活動に関して、アウトソーシングなどによって外部企業に依存する場合、企業の競争力を弱めてしまう。
ウ バリュー・チェーンの各々の価値活動とともに、それらの結び付き方は、企業の独特な経営資源やケイパビリティとして認識することができる。
エ バリュー・チェーンの全体から生み出される付加価値は、個別の価値活動がそれぞれ生み出す付加価値の総和であり、各価値活動の部分最適化を図っていくことが、収益性を高める。
正解:ウ
アの内容
買い手の感じる価値と企業のコストが同水準ということであれば顧客は特別に価値を感じていないことになり差別化の要因とはなりません。
よってアの内容は誤りです。
買い手の価値がコストよりも大きくなる場合に差別化の効果があると言えます。
イの内容
付加価値を生み出していない活動に関してはアウトソーシングを行った方が良いと言えます。
よってイの内容は誤りです。
逆に付加価値を生み出している活動に関してはアウトソーシングせずに自社で活動を行いコアな活動を作り出していくことが重要になります。
ウの内容
価値活動は個々ではなく全体の結びつき、連携によって生み出されることが重要で全体最適を図る必要があります。
よってウの内容は正しいです。
ケイパビリティとは企業が全体としてもつ組織的能力や強みのことをいいます。
エの内容
ウにあったように価値活動は個々ではなく全体の結びつき、連携によって生み出されることが重要で全体最適を図る必要があります。
よってエの内容は誤りです。
『バリューチェーン分析とは?目的や手順、SWOT分析との組み合わせ』のまとめ
バリューチェーン分析のポイントは以下のとおりです。
- バリューチェーン分析は企業の活動を2つの分類とそれぞれを4つと5つの合計9つの要素に分解する
- バリューチェーン分析で事業の成功要因やコストがどこにかけられているかを分析することができる
- バリューチェーン分析は内部環境分析であるためSWOT分析と組み合わせて使うことでスムーズに環境分析が行える
バリューチェーン分析を行うことで企業の内部環境を分析し成功要因やコストが大きいところを明確にすることができるようになります。