スピード感を持って事業を進めていこうとよく聞かれる言葉ではないでしょうか。
スピードを重視した経営を行うことで得ることのできるメリットを速度の経済性といいます。
メリットの中でも業界の中で先かげて事業を行うことを先発の優位性といいます。
先発の優位性は競争相手よりも早く市場に参入することでメリットを得ることです。
一般的には先に得られるメリットが大きいのですが実は後から参入するメリットもあります。
それを後発の優位性と言います。
この記事ではスピードに関係する競争優位性の速度の経済性、先発・後発の優位性について解説していきます。
速度の経済性
速度の経済性とは事業経営において速度をあげることで得られる経済性のことです。
情報獲得、仕事、商品開発、商品回転のスピードをあげることで有効性や効率性を高めることができる。
不確実性が高くなっている現代において速度の経済性を重要性が高くなっています。
- 他社より早く製品を投入することで先発の優位性が得られる
- スピードが競争優位の源泉となり利益率が向上する
- 在庫回転率などが高まり投資利益率が向上する
速度に関して優位性を築こうとする時間をめぐる競争のことをタイムベース競争と言います。
先発の優位性
先発の優位性で得られる具体的な内容には以下のようなものがあげられます。
- 顧客の心理面で参入障壁を形成することができる
- 経験曲線効果を早く得られるためコスト優位に立てる
- 気象資源(人材、資源、立地など)を先取りできる
- 顧客にスイッチコストが発生する
- デファクトスタンダードを確立できる
一方で先発企業の困難として以下のようなものがあります。
- 需要がない可能性がある
- 新商品・新市場の開拓に多くの費用と高い技術力が必要とされる
- 後発者によって低コストで模倣される恐れがある
後発の優位性
先発が有利とされる一方で後発の方にも有利となる一面があります。
大きなところではリスク回避ができることです。
具体的な内容としては以下のことがあげられます。
- 需要の有無を見極めて市場に参入することができる
- プロモーションのコストを節約することができる
- 先発者を模倣することで研究開発コストを節約できる
スピードに関係する競争優位性 - 中小企業診断士試験の過去問チェック
企業経営理論 平成24年度 第4問
いかに早く競争力のある製品を開発し、市場に供給するか、という時間をめぐる競争はタイムベース競争と呼ばれている。そのような競争をめぐる問題点や考慮すべき点に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 商品購入時にユーザー登録をしてもらって利用特典を与える販売方式は、バージョンアップした自社商品への乗り換えを難しくするので、その企業の商品の普及スピードを鈍化させることになる。
イ 生産リードタイムの短縮によって、原材料の在庫の回転率があがるが、生産コストに変化はなく、収益も変わらない。
ウ 先発して市場に参入すれば、有利な立地や優秀な人材を先取りできるばかりではなく、市場動向に素早く対応して、売り上げが増大する可能性が高くなる。
エ 他社に先駆けて特許等で参入障壁を築いて防衛的地位を固めると、ニッチ市場に入り込んでしまい、市場の変化に取り残されてしまうことになる。
オ 他社の競合品よりも多くの量の自社製品をすばやく生産することを続けると、単位あたりコストが増大し、市場競争で劣位に立たされることになる。
正解:ウ
アの内容
ユーザー登録をしてもらった場合は乗り換えは簡単になり、普及スピードを高めることができます。
よってアの内容は誤りです。
イの内容
在庫回転率が上がると保管量が下がり、在庫維持のコストが下がる可能性があります。
よってイの内容は誤りです。
ウの内容
先発して市場に参入することで人材や資源、立地などを手に入れることができます。
有利な状況を築くことができるので売上が増大する可能性は高くなると言えます。
よってウの内容は正しいです。
エの内容
先発して市場に参入することで築いた参入障壁がニッチ市場に入り込む要因になるとは限りません。
よってエの内容は誤りです。
オの内容
先発して市場に参入することで早く経験曲線効果が得られ生産コストは減少していきます。
よってオの内容は誤りです。
『スピードに関係する競争優位性 速度の経済性、先発・後発の優位性』のまとめ
スピードに関係する競争優位性についてのポイントは以下のとおりです。
- スピードを重視した経営を行うことで得ることのできるメリットを速度の経済性という
- スピードをめぐり優位性を獲得しようとする競争のことをタイムベース競争という
- 市場に先駆けて得られるメリットのことを先発の優位性という
- 市場に対して後から参入することで得られるメリットのことを後発の優位性という