ポーターは競争優位を築くために3つの基本戦略があると主張しています。
3つとは以下の通りです。
- コストリーダーシップ戦略(低コスト戦略)
- 差別化戦略
- 集中戦略
3つの戦略は競争優位の源泉と競争の範囲の2つの軸から分類することができます。
いずれの戦略も自社がファイブフォースの中で優位性を確立して持続させるための戦略です。
3つの基本戦略 - コストリーダーシップ戦略(低コスト戦略)
コストリーダーシップ戦略とは同じ種類の製品を競合よりも低コストで生産・販売する戦略です。
大量生産を実施することで低コスト製品を作りシェアを高めます。
あくまで低コスト戦略であり低価格で販売する戦略ではありません。
コストリーダーシップ戦略の定義
コストリーダーシップ戦略は、事業の経済的コストを競合企業より下回る水準に引き下げることで競争優位を獲得する戦略です。
単純な安売りをする低価格戦略ではありません。
規模の経済と経験曲線効果を利用する
コストを下げるためには大規模な生産設備の導入で規模の経済を発揮する。
大量生産と時間経過とともに経験を積みあげることで経験曲線効果を発揮する。
上記のようなことでコストを下げる戦術が重要になってきます。
また低コストでの生産が実現できたらプロモーションを実施して認知度を高めシェアを獲得することが重要です。
コストリーダーシップ戦略とバリューチェーン分析の関係
バリューチェーン分析もポーターが提唱した考え方です。
コストリーダーシップ戦略に活用することで、高い相乗効果が得られると考えられています。
バリューチェーン分析で自社の事業を評価し各工程のコストと付加価値のバランスを見極めて、品質は高いままに低コストにしていくことができます。
ます。
コストが下がった分はすべて利益になります。
コストリーダーシップ戦略とファイブフォース分析の関係
コスト優位に立つことで競争圧力に対して有利に働きます。
- 新規参入の脅威:規模の経済や経験曲線効果などの低コスト対応はすぐには実現が難しいため参入障壁となる
- 代替品の脅威:代替品が低価格で値下げしてきても利益を出すことができる
- 買い手の交渉力:値下げ要求に対しての対応の幅を大きく取ることが出来る
- 売り手の交渉力:値上げ要求に対しての対応の幅を大きく取ることが出来る
- 既存業者間:低コストなため低価格であっても利益が大きいため価格競争となっても長期戦で勝つことが出来る
コストリーダーシップ戦略のリスク
コストリーダーシップ戦略のリスクは競合が最新設備の導入などで戦略を模倣した際に価格競争が激化する可能性があります。
そしてコスト削減ばかり注力しているとニーズの変化、代替品への対応が疎かになってしまうことがあげられます。
3つの基本戦略 - 差別化戦略
差別化戦略は自社の製品を顧客にとって魅力的な独自性を持たせることにより価格以外の優位性を築く戦略です。
差別化が顧客に認められれば高い価格で販売することが可能となり競合に対して競争優位を築けます。
差別化戦略の定義
差別化は市場が認知する他社の製品・サービスの価値と自社の製品・サービスの認知上の価値を増加させることです。
差別化で企業が競争優位を獲得しようとする戦略を差別化戦略といいます。
差別化戦略は具体的には以下のようなものがあります。
- 製品自体の差別化
- 製品サービスに関する差別化
- 顧客サービス、ブランドイメージなどの認知度による差別化
製品自体の差別化
製品そのものの品質、性能、デザイン、包装などで差別化を図ります。
製品サービスに関する差別化
アフターサービス、代金の支払い条件などで差別化を図ります。
ブランドイメージなどの認知度による差別化
広告によって製品の認知度を向上させたり、企業イメージを向上させブランドイメージを定着させるなどの差別化を図ります。
差別化戦略とファイブフォース分析の関係
差別化すること競争圧力に対して有利に働きます。
- 新規参入の脅威:差別化された商品であれば供給量に影響がないので価格競争にならない
- 代替品の脅威:代替品と別の商品、サービスと認識されるので価格競争にならない
- 買い手の交渉力:差別化で他にない商品となることで価格交渉に応じる必要がない
- 売り手の交渉力:差別化で他にない商品となることで原材料の高騰に合わせて値上げしても利益を維持できる
- 既存業者間:価格競争を行う必要がなく利益を維持できる
差別化戦略のリスク
差別化戦略のリスクとして以下のようなことがあげられます。
- 競合企業による模倣
- 低価格製品との価格差
1つ目に差別化が競合企業から模倣され築いた優位性を打ち消されるリスクがあります。
絶えず製品の改良を行い顧客サービスを充実させるなどの対策が重要です。
2つ目にコストリーダーシップ戦略を採用する企業が低コスト戦略をとっている際に価格差が開きすぎると顧客を獲得できないリスクがあります。
商品、業界によってどれくらいまでの価格差が購買力に影響があるかを把握し確認しながら差別化を図っていくことが重要です。
バリューチェン分析でユニークな価値を提供できる機能に注力することが必要となります。
3つの基本戦略 - 集中戦略
コストリーダーシップ戦略と差別化戦略が広い市場をターゲットするのに対して集中戦略は特定のセグメントに競争範囲を狭める戦略をとります。
競争範囲を狭めることで自社重要の経営資源を集中的に活用していく戦略です。
集中戦略は中小企業で良く採用されている戦略です。
中小企業は経営資源が限られているためいずれかの部分を選択し集中することが重要だからです。
集中戦略は以下の2つに分類されます。
- コスト集中戦略
- 差別化集中戦略
コスト集中戦略は戦略の優位性を低コストとし、差別集中戦略は戦略の優位性を差別化に求めます。
集中戦略のリスク
集中戦略のリスクは選択した市場が一定以上の規模を持たないことがあげられます。
顧客ニーズとズレが生じて事業が成り立たなくなることが懸念されます。
3つの基本戦略 - 中小企業診断士試験の過去問チェック
企業経営理論の平成28年度 第5問をみてみましょう。
企業経営理論 - 平成28年度 第5問
多数の競争相手が互いにしのぎを削る熾烈な競争を繰り広げている業界での、効果的な戦略対応に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア これまでの内部留保を活用して、同業他社との合併を進めることで市場シェアを拡大し、規模の経済や経験効果を高めて、コスト優位性を生み出して収益の拡大を図る。
イ 差別化が難しい汎用品による乱戦状況を改善するべく、加工の水準をあげて顧客の信頼を得たり、顧客に利便性の高いサービスを付け加えたりして、自社製品の付加価値を高めて、根強いロイヤルティをもつ顧客層の拡大を図る。
ウ 多種多様な顧客ニーズに対応するべくあらゆる製品を提供して、大量生産によるコスト優位による競争優位を確立する。
エ 多数の企業が乱立する原因である多様な市場ニーズに対応するべく、製品の設計を見直して生産コストを大幅に切り下げて、標準品が買い得であることを理解してもらい、規模の経済を基に競争優位をつくり出す。
正解:ウ
アの内容
同業他社と合併することで市場シェアの拡大と規模の経済の発揮が期待できます。
また生産量が増加すれば累積生産量が増加し経験曲線効果が発揮されることも期待できます。
よってアの内容は正しいです。
イの内容
製品の中核で差別ができない場合には製品の品質を高めたり、付随するサービスを向上させたりすることで差別化することが重要になります。
よってイの内容は正しいです。
ウの内容
製品の品種を増やすっことは大量生産のコスト優位性を失う可能性があります。
よってウの内容は誤りです。
エの内容
製品の設計を見直すことで多くの顧客ニーズに対応できる標準品を作ることができれば規模の経済を発揮でき、低コストでの優位性を獲得することができます。
よってエの内容は正しいです。
『ポーターの3つの基本戦略とは?3つの戦略で競争優位を獲得する』のまとめ
ポーターの3つの基本戦略のポイントしては以下のとおりです。
- 3つの基本戦略はコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略
- コストリーダーシップ戦略は低コストで生産・販売を目的とし規模の経済や経験曲線効果を利用することが重要
- 差別化戦略は製品自体、付随サービス、ブランドイメージのいずれかで差別化を図る
- 集中戦略は特定のセグメントにて低コストもしくは差別化のどちらかで優位性を獲得する戦略
ポーターの3つの基本戦略は競争優位を獲得するための戦略パターンとして重要になりますのでおさえておきしょう。