新製品には市場浸透価格戦略や上澄吸収価格政策を利用する

価格はマーケティングミックスの中でも特別な特性を持った要素です。

価格設定は大きく製品の行方を左右するといっても過言ではありません。

新製品の価格設定には代表的な2つの戦略があります。

  • 市場浸透価格戦略
  • 上澄吸収価格価格戦略

市場浸透価格戦略はペネトレーションプライス政策や初期低価格戦略と呼ばれることもあり、新製品を安い価格に設定して大量に販売する戦略です。

上澄吸収価格価格戦略はスキミングプライス政策や初期高価格戦略と呼ばれることもあり、新製品を高い価格に設定し価格に敏感でない購入者に対して販売する方法です。

真逆の戦略をとる2つの成立条件とメリットをおさえておくことがポイントとなります。

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市場浸透価格戦略(ペネトレーションプライス政策)は最初は低価格で

市場浸透価格戦略はペネトレーションプライス政策や初期低価格戦略と呼ばれることもあります。

市場浸透価格戦略は新製品に安い価格を設定し大量に販売することでシェアを高める戦略です

市場浸透価格戦略の成立条件

市場浸透価格戦略が成立する条件は2つあります。

  • 市場が価格に対して敏感である
  • 売上高の増加に伴い製造、流通コストが低下する
  • 低価格設定することで競合他社を締め出すことができる

市場が価格に対して敏感であるということは価格を下げた場合に消費者が反応して需要が増加するということです。

一言で言うと需要の価格弾力性が高い商品であると言えます。

メリット

市場浸透価格戦略のメリットは早期に市場シェアを獲得できるため競合他社よりも規模の経済性経験曲線効果を早く発揮できることです。

規模の経済性や経験曲線効果でさらに競合よりも安いコストで生産できるようになるためさらに安い価格で販売することができます。

より安い価格で販売することができればさらにシェアを高めてと好循環を築くことができ強固な優位性を獲得できます。

ちなみに市場浸透価格戦略は最寄品でよく見られる価格戦略です。

上澄吸収価格価格戦略(スキミングプライス政策)は最初は高価格で

上澄吸収価格戦略はスキミングプライス政策や初期高価格戦略と呼ばれることもあります。

上澄吸収価格戦略は新製品に高い価格を設定し価格に敏感でない購入者に対して販売する方法です。

上澄吸収価格戦略の成立条件

上澄吸収価格戦略が成立する条件として4つあります。

  • 製品の品質とイメージが高価格に見合ったものである
  • 高価格でも欲しがる購入者が十分な数である
  • 少量生産のコストが高価格で得られる利益を打ち消さないこと
  • 競合他社に容易な参入を許さないこと

新製品の品質やイメージが高く、競合との差別化できており、競合から模倣されにくいことが重要です。

同じような製品がより安く販売できる競合が参入していくると一気に消費者は流れてしまう恐れがあります。

よって市場浸透価格戦略とは逆に需要の価格弾力性が高い場合には向いていない戦略と言えます。

上澄吸収価格戦略のメリット

上澄吸収価格戦略のメリットは利益率が高いため早期に新製品の製品コスト回収が見込めることです。

ただ高価格といっても高く設定しすぎるとあまり売れない恐れがあるのでバランスが重要です。

またどんな新製品でもいつかは競合に模倣されて価格競争になっていくのが製品のライフサイクルと言えます。

はじめに上澄吸収価格戦略により高価格を設定したとしても時間の経過とともに価格が下がっていくことが一般的なサイクルとなります。

市場浸透戦略と上澄吸収価格戦略 - 中小企業診断士試験の過去問チェック

企業経営理論 平成21年度 第22問

価格設定は、企業のマーケティング目的や、消費者心理を反映して行われる。以下の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

ア イメージ価格設定(イメージ・プライシング)は、消費者の自己イメージ形成欲求や顕示欲求が強い製品群において、とくに有効である。

イ 市場浸透価格(ペネトレーティング・プライス)の設定を通じて企業が市場占有率の最大化を目指すとき、ひとつには経験効果によって生産費用と流通費用が低減すること、いまひとつは市場の需要の価格弾力性が低いことが、その成功の条件となる。

ウ 消費者は、特定の製品の価格を正確に記憶していることは少ないが、過去の買い物経験などを通じて蓄積された内的参照価格と、値札情報など実際の買い物場面で提示されている外的参照価格の影響を受けて購買意思決定を行う。

エ 大規模な投資をともなう技術開発をベースとした新製品が市場に投入される際、上澄み吸収価格(スキミング・プライス)が用いられることが多い。企業がこの方法を採用するための前提条件は、利益を期待できる十分な数の買い手による需要が存在すること、さらにはイニシャル・コストが高いことから潜在的な競合企業の参入が困難なことである。

オ 同一の製品であっても、国内と海外、シーズン中とオフシーズン、あるいは業務用と家庭用などの区分によって、消費者間での需要の価格弾力性が異なることがある。

正解と解説 - 企業経営理論 平成21年度 第22問

正解:イ

アの内容

イメージ価格設定とは同程度の品質や機能を持つ製品に異なるブランドをつけ、顧客のイメージに差を植え付けることでより高い価格で販売するといったものです。

製品を所持することによりステータスを感じるような製品には有効な手段です。

よってアの内容は正しいです。

イの内容

市場浸透価格戦略は新製品に安い価格を設定し大量に販売することでシェアを高める戦略です

市場浸透価格戦略のメリットは早期に市場シェアを獲得できるため競合他社よりも規模の経済性や経験曲線効果を早く発揮できることです。

また市場浸透価格戦略が成立する条件として需要の価格弾力性が高い商品である必要があると言えます。

よってイの内容は誤りです。

ウの内容

内的参照価格とは過去の経験から思い出される価格のことです。

外的参照価格は売り場などの環境から感じる価格のことです。

よってウの内容は正しいです。

エの内容

上澄吸収価格戦略は新製品に高い価格を設定し価格に敏感でない購入者に対して販売する方法です。

成立条件としては新製品の品質やイメージが高く、競合との差別化できており、競合から模倣されにくいことが重要です。

よってエの内容は正しいです。

オの内容

同一の製品であっても時期や場面の違いで需要の価格弾力性が異なることはあります。

旅行などのパックを思い浮かべるとイメージしやすいと思います。

よってオの内容は正しいです。

『新製品には市場浸透価格戦略や上澄吸収価格政策を利用する』のまとめ

市場浸透価格戦略や上澄吸収価格政策のポイントとして以下のことがあげられます。

市場浸透価格戦略と上澄吸収価格政策のポイント
  • 市場浸透価格戦略は新製品に安い価格を設定し大量に販売することでシェアを高める戦略
  • 市場浸透価格戦略が成立するには需要の価格弾力性が高く、売上高の増加に伴い製造、流通コストが低下する必要がある
  • 市場浸透価格戦略のメリットは早期に市場シェアを獲得できるため競合他社よりも規模の経済性や経験曲線効果を早く発揮できる
  • 上澄吸収価格戦略は新製品に高い価格を設定し価格に敏感でない購入者に対して販売する方法
  • 上澄吸収価格戦略が成立するには新製品の品質やイメージが高く、競合との差別化できており、競合から模倣されにくいことが重要
  • 上澄吸収価格戦略のメリットは利益率が高いため早期に新製品の製品コスト回収が見込める
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